QRコード決済は必要なのか?

2019-01-28 16:52:00

2次元バーコード「QRコード」を使ったスマートフォン決済に参入企業が相次ぐなか、支払いに現金を使わないキャッシュレス化普及の大きな目的とされるインバウンド(訪日外国人)の利便性向上に本当に役立つのか疑問の声が上がっている。中国以外の国ではクレジットカードや銀行口座から即時に引き落とされるデビットカードが主流のため、国内でQRコードの受け皿を広げても使ってもらえるか分からないためだ。
 
●アメリカでは1%以下 
大手クレジットカード会社の米国駐在員はこう漏らす。コード決済を利用している人は街中で見かけない。地下鉄を除けば非接触決済自体ほとんど利用されておらず、利用率は1%以下という統計もある。 英国やフランスといった欧州や、キャッシュレス化が急速に進む韓国なども状況は同じで、QR決済は中国人観光客が中国電子商取引(EC)大手アリババグループの電子決済サービスアリペイや、テンセント系のウィーチャット・ペイを利用している程度だという。確かに、日本クレジット協会の集計では、民間の消費支出に占めるキャッシュレス決済の割合ではクレジットカードとデビットカードが圧倒的に多い。韓国ではこの2種類で95.9%を占めており、英国は68.5%、米国でも46%に上る。

アリペイが爆発的に普及した中国では、個人の信用力を重視するクレジットカードや銀行口座の普及が遅れた背景があり、世界的にみれば特殊な立ち位置だ。
ラグビーワールドカップや年東京五輪などで見込まれる外国人観光客の増加を取り込もうと、環境整備は進む。消費税増税対策の目玉で導入されるキャッシュレス決済のポイント還元に加え、地方自治体の取り組みも盛んだ。
ただ、外国人観光客の利便性を重視するならQRにこだわらない対策が必要だ。

 ●国内では続々参入
国内企業は既にQR決済を次世代の主役とみて群雄割拠の状況。クレジットカードや交通系電子マネーと異なり加盟店側の初期費用がほとんどかからないため導入しやすく、急速な普及が見込めるためだ。
ソフトバンクとヤフーが共同出資する「ペイペイ」では、昨年12月に支払額から総額100億円を還元するキャンペーンを実施したことで利用者が急増した。NTTドコモや楽天も膨大な顧客基盤を強みに加盟店拡大を急いでいる。
銀行業界も負けてはいない。みずほフィナンシャルグループは今春にも地方銀行60行程度と共同で新たな電子マネーを発行し、QR決済ができるようにする。
こうした流れが生まれたのは、政府が20%程度と国際的に低い日本のキャッシュレス比率を2025年までに40%まで引き上げる目標を掲げ、業界を後押ししているためだ。

●根強い現金信仰 
全国にあるATMの恩恵で現金の使い勝手がいい日本では、“現金信仰”がいまだに根強い。また、高額消費に向いたクレジットカードと決済速度が速い交通系電子マネーが普及していることもあり、スマートフォンでアプリを立ち上げないと使用できないQR決済がどこまで普及するかは未知数だ。
金融とITが融合した「フィンテック」の競争が激しくなる中、QR決済の主導権争いは銀行やクレジットカード会社といった既存大手の牙城を崩そうとIT業界などの新興勢力が揺さぶりをかける場と化した。競争が激しくなることで国内でキャッシュレス決済の普及が遅れている小規模店舗や地方での導入を促す効果が期待できるが、ペイペイのキャンペーンではクレジットカードが不正に利用される被害が相次ぐなど、まだまだ発展途上のサービスだ。

銀行など既存大手からは口座振替や振り込みを算入すれば日本のキャッシュレス比率は既に5割を超えていると、急速な非現金比率の引き上げ方針に疑問を呈する声もある。消費者にとって最も使い勝手がいい決済手段は何なのか、冷静に問い直す必要がありそうだ。